結論から言うと、ルーマニアで通信に困らない最短ルートは 日本出発前に travel eSIM を入れておくこと、そして 「書類の心配はいらない、心配すべきは山の電波」と発想を切り替えることです。ルーマニアは SIM の実名登録義務が存在しない数少ない EU 国 で、憲法裁判所が登録義務化の法案を繰り返し違憲としてきました。トルコやインドで悩まされる KYC の壁は、ここには最初からありません。代わりに効いてくるのが電波です。ルーマニアは固定回線では EU 屈指の光ファイバー大国(固定回線の 4 本に 3 本が光)である一方、5G の展開では EU で遅れている側。「ルーマニアはネットが速い」という評判は固定回線の話であって、カルパチア山脈を走るあなたのスマホの話ではない——この 1 点を最初に理解しておくのが、現地で慌てない一番の近道でした。

ルーマニア、eSIM は何を気をつければいいですか。

実は逆なんです。ルーマニアは SIM の実名登録が要らない数少ない EU 国で、憲法裁判所が繰り返し退けてきました。

登録が無い? トルコやインドとは真逆ですね。

そうです。だから詰まるのは書類ではなく、カルパチア山脈に入った瞬間に効いてくる 5G の薄さのほうなんですよ。

ルーマニアってネットが速い国じゃないんですか。

速いのは固定回線です。固定の 4 本に 3 本が光ファイバーで EU 屈指、でも 5G は EU で遅れている側なんです。

評判と実際がずれてるんですね。準備は何を?

出発前に eSIM を入れておけば十分です。2025 年からシェンゲン入りしたので、周遊プランも選択肢になりますよ。
このページで分かること: 日本人がルーマニアで通信を確保するときに私 (sasapy) が先に確認しているのは、(1) SIM の実名登録義務が無いという制度事実と、そのせいで多くのガイドが書いている「パスポート必須」が誤りである点、(2) 固定回線は EU 屈指なのに 5G は EU 下位というルーマニア特有のねじれ、(3) 2025 年 10 月に Telekom のモバイル事業が分割買収され 実質 3 キャリア体制へ移行したこと、(4) 2025 年 1 月のシェンゲン完全加盟で周遊の形が変わり、単国プランより欧州周遊プランが合理的になる場面が増えたこと、の 4 点です。ANCOM (ルーマニア通信規制庁)・欧州委員会・EU 理事会の公開資料で裏づける形で 1 本にまとめました。
ルーマニアに SIM の実名登録は無い——憲法裁判所が退け続けた制度
本ページの開示: 本ページにはアフィリエイトリンクが含まれており、ご利用に応じて当サイトに収益が発生する場合があります。制度・統計情報は 2026 年 9 月時点で、私 sasapy が ANCOM (ルーマニア国家通信規制庁)・欧州委員会・EU 理事会・各社公式の公開資料から確認した値を主軸に整理しています。料金は変動が速いため、購入前に各社公式で最終確認してください。
海外 eSIM の記事を読み慣れていると、まず「パスポートは要るのか」「開通に何日かかるのか」を身構えてしまいます。トルコの IMEI 登録、インドの KYC、オーストリアの実名登録——直近の渡航先がそういう国ばかりだと、その反射は自然です。ところがルーマニアでは、その心配そのものが要りません。
ルーマニアにはプリペイド SIM の実名登録を義務づける法律が、現在も施行されていません。政府は過去に何度も義務化を試みましたが、2019 年 9 月に緊急政令で導入された登録義務は 2020 年 2 月 18 日に憲法裁判所が全会一致で違憲と判断し、失効しました。デジタル権利団体 EDRi はこれを「8 年で 6 度目の立法試行」と記録しています。プライバシー団体 Privacy International の各国一覧でも、ルーマニアはSIM 登録義務の無い欧州国の側に分類されています。

じゃあ現地でプリペイドを買うのは簡単なんですね。

法律上はそうです。ただ店舗によっては契約管理のため身分証の提示を求められることはあります。
実務上の注意を 1 つだけ。「登録義務が無い」と「一切何も聞かれない」は別です。後払い契約 (アボヌマン) や店頭の在庫管理では身分証の提示を求められることがありますし、事業者側の判断で本人確認を行うこと自体は禁じられていません。ただ、国の制度として「登録しないと開通しない」という壁は存在しない——これがルーマニアの立ち位置です。英語のガイド記事には「ルーマニアでは SIM 購入にパスポートが必須」と書かれているものが少なくありませんが、少なくとも法制度としてはその記述に根拠がありません。
本当の弱点は 5G——「ネットが速い国」は固定回線の話
ルーマニアの通信を語るときに必ず出てくるのが「ヨーロッパで一番ネットが速い国のひとつ」という評判です。これは半分正しく、旅行者にとっては半分ミスリードです。速いのは固定回線で、旅行中にあなたが使うモバイルではありません。
ANCOM (ルーマニア国家通信規制庁) の公表値では、固定インターネット接続 660 万件のうち 約 500 万件が光ファイバー——固定回線の 4 本に 3 本が光という、EU でも屈指の普及率です。集合住宅が多く、事業者間の敷設競争が激しかったことが背景にあります。一方でモバイルは、アクティブ回線 2,150 万件のうち 5G はごく一部にとどまり、大半は依然 4G が主力です。欧州委員会の Digital Decade 国別レポートも、ルーマニアを「固定インフラでは先導役、5G では後れを取っている」と明記しています。

観光で行く分には、実際どのくらい影響しますか。

ブカレストやクルジュなど都市部は快適です。効いてくるのはカルパチア山脈と農村部ですね。
旅程に落とすとこうなります。ブカレスト・ブラショフ・クルジュナポカ・ティミショアラなどの都市部では、体感で困る場面はほとんどありません。IT 産業の集積地でもあり、カフェの Wi-Fi も含めて通信環境は良好です。問題はトランスファガラシャン街道やブチェジ山塊、マラムレシュの農村部。ここは 4G が切れ切れになる区間が普通にあります。山岳ドライブと修道院巡りを予定しているなら、「オフラインマップを落としておく」ことのほうが、eSIM の容量選びより効きます。Google マップの該当エリアを出発前にダウンロードしておくだけで、体験がまるで変わります。
2025 年に 3 キャリア体制へ——Telekom ブランド消滅と Digi の安さ
もう 1 つ、古いガイド記事が確実に間違えているポイントがあります。キャリアの数です。長らくルーマニアは Orange / Vodafone / Telekom / Digi (RCS&RDS) の 4 社体制と説明されてきましたが、2025 年 10 月 1 日に Telekom Romania Mobile の買収が完了しました。Vodafone が後払い契約と店舗網・ネットワーク設備を、Digi がプリペイド顧客基盤を引き継ぐ形の分割買収で、Telekom ブランドは 2026 年 7 月以降 Vodafone へ法的に統合されます。
つまり 2026 年 9 月現在、ルーマニアのモバイルは実質 Orange / Vodafone / Digi の 3 社です。「空港で Telekom のプリペイドを買おう」と書いてある記事を見かけたら、それは買収前の情報です。接続先という観点では、travel eSIM の多くは Orange か Vodafone のネットワークにローミングします。この 2 社はカバレッジが広く、旅行者が使う分には妥当な選択です。

Digi が安いと聞きました。旅行者も使えますか。

使えます。ただ店舗が街中中心で、短期旅行だと店を探す時間のほうが高くつきがちです。
Digi は国内料金の安さで知られ、固定でも ANCOM 集計で固定インターネットの 7 割前後を押さえる最大手です。長期滞在なら現地プリペイドの検討価値は十分あります。ただし短期旅行では、店舗を探して営業時間内に立ち寄るコストが効いてきます。登録義務が無いぶん手続きは軽いとはいえ、到着当日から地図とライドシェアを使いたいなら、離陸前に eSIM を入れておくほうが確実です——これは制度の問題ではなく、単純な段取りの問題です。
2025 年 1 月にシェンゲン完全加盟——単国プランより周遊プラン
旅程の形を変えたのがシェンゲンです。ルーマニアは 2024 年 3 月 31 日に空路・海路の、そして 2025 年 1 月 1 日に陸路の国境検査が撤廃され、完全加盟国になりました。EU 理事会が 2024 年 12 月 12 日に全会一致で決定したものです。
これは通信の選び方に直結します。陸路の検問が無くなったことで、ハンガリー → ルーマニア → ブルガリアのような周遊や、ブダペストから車・列車でトランシルヴァニアへ入る行程が現実的になりました。2 か国以上をまたぐなら、ルーマニア単国プランより「欧州周遊プラン」のほうが総額でも手間でも有利になる場面が多いです。国境を越えるたびに eSIM を切り替える必要が無くなります。

1 か国だけの旅行なら単国プランでいいですか。

はい。ルーマニアだけに 1 週間なら単国プランが最安です。周遊するなら欧州プランに切り替えましょう。
なお通貨はユーロではなくレイ (RON) です。シェンゲンには入りましたがユーロ圏ではないので、両替やカード決済時の通貨選択には注意してください。カードのタッチ決済は都市部で広く使えます。緊急通報は EU 共通の 112 です。
容量別の料金の目安とクーポンコード一覧 (2026 年 9 月時点)
ルーマニアはもともと通信料金が安い市場なので、travel eSIM の価格も欧州の中では低い部類に入ります。以下は公開されている比較情報から拾った目安レンジです。各社とも価格改定が頻繁なため、確定金額は必ず購入画面でご確認ください。
| 容量 / 有効期間 | 目安価格レンジ (2026 年 9 月時点の公開値) | 向いている旅程 |
|---|---|---|
| 1 GB (7 日) | $4.50 〜 $5.49 前後 | 3〜4 日の都市滞在。地図・SNS・レビュー確認が中心 |
| 5 GB (30 日) | $12 前後 | 1 週間のブカレスト + ブラショフ。標準的な観光旅程 |
| 10 GB (30 日) | $17 〜 $20 前後 | 2 週間の周遊、写真・動画のアップロードが多い人 |
| 20 GB (30 日) | $26 〜 $29.99 前後 | 長期滞在・リモートワーク。テザリング前提なら必須 |
容量選びの実感としては、ルーマニアで容量を使い切る人はあまりいません。宿とカフェの Wi-Fi が概ね速いためです。むしろ効くのは有効期間のほうで、周遊で 2 週間を超えるなら 30 日プランを選んでおくと安心です。
クーポンコード一覧
| プロバイダ | クーポンコード | 割引 | 備考 |
|---|---|---|---|
| Saily | CAIRNR6205 |
$5 OFF | Nord Security 系。広告・悪質サイトブロックを標準搭載。定価が下限額に満たない最小プランは対象外 |
| Nomad | ILEXBDNSXSBA |
$5 OFF | 長期・大容量向け。定価 5 米ドル未満のプランには適用不可 |
| esim4travel | cairnroam (取得準備中) |
10% OFF | 最安クラス。コード発給手続き中のため、適用可否は購入時にご確認ください |
クーポンの適用条件は各社公式の規約に従います。Saily (公式 T&C) は初回購入のみ・一定額未満は対象外・併用不可、Nomad (公式 referral 規約) は定価 5 米ドル未満に適用不可です。ルーマニアは 1GB プランがもともと安いため、最小プランではクーポンが効かないことが多い点に注意してください。5GB 以上を選ぶ場合に割引の効果が出ます。
推奨 eSIM 3 選——ルーマニアでの使い分け
Saily——初めての 1 枚と、都市中心の観光に
Saily は NordVPN で知られる Nord Security が提供する eSIM です。アプリが素直で、購入から開通までの導線が短いのが利点。広告ブロックと悪質サイトブロックが標準で付くため、旅先で公共 Wi-Fi を併用しがちな人には実用的な保険になります。ブカレストやブラショフでの安定性の評価も高く、初めて eSIM を使うならここからで問題ありません。
Nomad——2 週間以上の周遊と大容量に
Nomad は大容量・長期プランの単価が良く、欧州周遊プランの選択肢が豊富です。シェンゲン加盟で現実的になった「ハンガリー → ルーマニア → ブルガリア」型の行程では、単国プランを 3 枚買うより素直に安く済みます。ノート PC でのテザリングを前提にする人にも向いています。
esim4travel——短期・最安で割り切る
esim4travel はとにかく単価を下げたいときの選択肢です。1GB クラスの短期プランが安く、「地図とメッセージが使えれば十分」という割り切った使い方ならこれで足ります。ルーマニアは Wi-Fi 環境が良いので、この割り切りが成立しやすい国でもあります。

結局どれを選べばいいか、一言で言うと?

ルーマニアだけの短期なら esim4travel、周遊や長期なら Nomad、迷ったら Saily で失敗しません。
出発前の設定手順と、現地に着いてからの実務
ルーマニアは eSIM アプリの遮断も IMEI 登録も無いので、手順そのものは拍子抜けするほど単純です。それでも出発前に済ませておく理由は、到着直後こそ通信が要るからです——空港からの配車、宿の場所確認、鉄道アプリ。ここで繋がらないと段取りが崩れます。
- 出発前に自宅の Wi-Fi で eSIM を購入し、QR またはアプリからプロファイルをインストールする。
- 端末が SIM フリー / eSIM 対応か確認する (日本のキャリア購入端末は SIM ロック解除済みか要確認)。
- モバイルデータ通信の回線を eSIM 側に、通話・SMS を日本の回線に割り当てる (デュアル SIM 設定)。
- 日本回線のデータローミングは必ずオフにする。ここを切り忘れると高額請求の原因になります。
- Google マップでブカレスト・トランシルヴァニア周辺のオフラインマップをダウンロードしておく。
- 現地到着後、機内モードを解除して数分待つ。自動で Orange か Vodafone を掴みます。
現地での実務も 3 点だけ押さえれば十分です。通貨はレイ (RON) でユーロではないこと、カードのタッチ決済が都市部では広く使えること、そして緊急通報は 112 であること。ATM での引き出し時に「自国通貨で決済しますか」と聞かれたら、レイ建てを選ぶほうが基本的に有利です。

公共 Wi-Fi はどのくらい使って大丈夫ですか。

固定回線が速いので快適ですが、決済や認証は eSIM の回線に切り替えるのが安全です。
よくある質問
ルーマニアで SIM を買うのにパスポートは必要ですか?
法律上の登録義務はありません。ルーマニアではプリペイド SIM の実名登録を義務づける法律が施行されておらず、2020 年 2 月に憲法裁判所が登録義務を違憲と判断しています。ただし事業者が独自に身分証の提示を求めること自体は妨げられていないため、店舗によっては提示を求められる場合があります。travel eSIM ならそもそも現地手続きが不要です。
ルーマニアは EU なので、日本のスマホはそのまま使えますか?
EU 域内のローミング無料化 (Roam Like At Home) は EU 域内の契約者が対象で、日本の契約には適用されません。日本のキャリアの海外パケット定額は 1 日あたり数百〜3,000 円程度かかるため、1 週間の旅行なら travel eSIM のほうが大幅に安く済みます。
ルーマニアの通信速度は実際どうですか?
都市部は快適、山間部は不安定というのが実態です。固定回線は EU 屈指の光ファイバー普及率(固定接続の約 4 分の 3 が光) を誇りますが、5G の人口カバー率は EU の中では遅れている側です。ブカレストやクルジュでは困りませんが、カルパチア山脈の峠道では圏外区間があります。
Telekom のプリペイドを空港で買えますか?
買えません。2025 年 10 月に Telekom Romania Mobile の買収が完了し、後払い契約は Vodafone、プリペイド顧客は Digi へ移りました。Telekom ブランドは 2026 年 7 月以降 Vodafone に統合されるため、現在の選択肢は Orange / Vodafone / Digi の 3 社です。
ハンガリーやブルガリアも回ります。プランはどうすべきですか?
欧州周遊プランをおすすめします。ルーマニアは 2025 年 1 月 1 日に陸路国境の検査も撤廃されシェンゲン完全加盟国になったため、陸路での周遊が容易になりました。2 か国以上をまたぐなら、単国プランを複数買うより周遊プラン 1 枚のほうが安く、切り替えの手間もありません。
ルーマニアの通貨はユーロですか?
いいえ、レイ (RON) です。シェンゲン圏には加盟しましたがユーロ圏ではありません。都市部ではカードのタッチ決済が広く使えます。決済時に通貨を選べる場合は、レイ建てを選ぶほうが手数料の面で基本的に有利です。
まとめ——ルーマニア旅行に最適な eSIM の選び方
ルーマニアは、これまでの渡航先で身につけた警戒心をいったん降ろしていい国です。KYC も IMEI 登録もアプリ遮断もありません。制度面の摩擦は、ヨーロッパの中でも小さいほうです。
そのぶん、注意を向けるべき先が変わります。(1) 5G は EU で遅れている側なので、山岳部はオフラインマップで補う。(2) キャリアは 2025 年に 3 社体制へ変わったので、古い記事の Telekom 情報は捨てる。(3) 周遊するならシェンゲン加盟を前提に欧州プランを選ぶ。この 3 点だけ押さえて、出発前に eSIM を入れ切っておく。それでルーマニアの通信の不安はほぼ消えます。困ったときの問い合わせは お問い合わせフォーム からどうぞ。
参考文献
- ANCOM (ルーマニア国家通信規制庁) — 5 million fixed fibre optic internet users — 固定接続 660 万件のうち約 500 万件が光ファイバー (固定回線の 4 本に 3 本)、アクティブモバイル回線 2,150 万件
- ANCOM — Annual Report 2024 (PDF) — 事業者別シェアと 5G 接続数の推移
- 欧州委員会 — Romania’s 2026 Digital Decade Country Report — 固定インフラでは先導役、5G 接続では後れを取っていると明記
- EDRi — Romania: Mandatory SIM registration declared unconstitutional, again — 2020 年 2 月 18 日に憲法裁判所が全会一致で違憲判断、8 年で 6 度目の立法試行
- Privacy International — Timeline of SIM Card Registration Laws — ルーマニアを SIM 登録義務の無い欧州国に分類
- EU 理事会 — 陸路国境検査の撤廃決定 (2024-12-12) — 2025 年 1 月 1 日にルーマニア・ブルガリアがシェンゲン完全加盟
- 欧州委員会 — Roaming: questions and answers — Roam Like At Home は EU 域内契約者が対象、2032 年 6 月 30 日まで延長
- Vodafone — Acquisition of Telekom Romania completes — 2025 年 10 月 1 日に買収完了、Telekom ブランドは Vodafone へ統合
最終更新日: 2026-09-02

